軟部外科担当獣医師、概要、医療機器、症例のご紹介

軟部外科

担当獣医師

軟部外科の紹介

軟部外科は、神経外科・整形外科以外の大部分を占める外科分野です。実際の臨床現場では、避妊・去勢手術を始め、消化器の切開や切除、肝臓腫瘍の摘出、膀胱結石の除去など軟部外科に含まれる内容は多岐にわたります。その為、様々な分野の知識を総動員し、血液検査・レントゲン検査・超音波検査・CT検査などから得られた結果を基に、綿密な手術計画を立てて手術を実施します。

よくある症状

  • お腹が張っている
  • 水を飲む量が多い
  • 尿の量が多い
  • 食欲が減っている
  • 元気がなくなった
  • しこりがある

等々、その他どのような症状でも気軽にお尋ねください。

軟部外科で使用する医療機器の紹介

超音波手術システム「Sono Surg」

超音波により組織を凝固しながら切開することが可能です。出血などを最小限に抑えた安全な手術をすることが出来ます。糸を使わずに処置が可能なので、手術後に縫合糸が体内に残ることで起きるとされる「縫合糸反応性肉芽腫」の予防にもなります。

動物用超音波手術器「Sono Cure」

組織の破砕・乳化・吸引などを同時に行うことが可能で、肝臓の血管を露出するときなどに用います。血管や神経は温存したまま、周囲の組織のみを除去することが出来る為、臓器へのダメージを最小限に抑えます。また、結紮したい血管にスムーズにアプローチできることから、手術時間の大幅な短縮にもなります。

症例紹介

門脈体循環シャント

門脈体循環シャントは門脈と体循環を連絡する異常な血管が肝内または肝外に存在し、先天性と後天性に分類されます。
毒素が全身を回るため、食欲不振や下痢、流涎などの症状があり、ひどい場合は発作がみられます。
血液検査や超音波検査、CT検査にて診断を行います。治療は外科手術により異常な血管を閉鎖します。

横隔膜ヘルニア

横隔膜は、胸腔と腹腔を隔てる膜で呼吸に関連します。横隔膜ヘルニアは外傷(特に交通事故)により、膜の一部が破れ、腹腔内臓器が胸腔内にどびだした状態をいいます。
治療は手術によって破れた横隔膜をふさぎます。
また、慢性横隔膜ヘルニアの場合、手術による整復によって状態が悪化する場合もあり、呼吸困難など普段の生活に影響がない場合は保存療法を行うこともあります。

会陰ヘルニア

会陰部の筋肉が分離して、直腸などの腹腔内臓器や骨盤腔内臓器が逸脱する病気です。
高齢の未去勢オスにみられる事が多く、雄性ホルモンの関与や過度な腹圧の上昇などが原因として考えられています。
会陰部の腫脹や排便・排尿困難などの症状がみられ、治療は手術によるヘルニア孔の閉鎖によってなされます。閉鎖には周囲の筋肉を利用することが多いですが、筋肉の委縮が激しい場合、人工メッシュなどを用いて閉鎖する場合もあります。

会陰尿道造瘻術

雄犬や雄猫に尿道閉塞が起こった場合、カテーテルを挿入し尿路を確保することがありますが、しかし、尿道閉塞が繰り返される時には、会陰尿道造瘻術を実施する必要があります。
手術は尿道の開口部を会陰部(肛門の下あたり)に設置する方法で、尿路を確保します。手術後は尿道閉塞が解除され、良好に経過します。

胆嚢粘液嚢腫

胆嚢内に粘性の高いゼリー状のものが蓄積され、胆管閉塞や壊死性胆嚢炎を引き起こす病気で、嘔吐や食欲不振、黄疸などの症状がみられます。
この病気は高脂血症や甲状腺機能低下症の犬によくみられます。
超音波検査(キウイフルーツ状パターン)や血液検査にて診断を行います。内科治療による劇的な改善は乏しく、場合によっては胆嚢破裂を引き起こすため、検査結果、症状によっては摘出手術が必要です。

軟口蓋過長症

短頭種(パグ、ボストン・テリアなど)にみられ、軟口蓋が長いことで呼吸困難を引き起こす病気です。
症状は喘鳴(いびき)や吸気時の努力性呼吸などがみられ、最悪の場合、呼吸困難により死亡する事もあります。
程度にもよりますが、過長した軟口蓋を手術により切除することで、呼吸が楽になります。また、短頭種症候群の一部であるため、外鼻孔狭窄や外反喉頭球形嚢を伴っている場合、それらに対しても外科的な処置が必要な場合もあります。

尿道再建術

交通事故などの強い外傷により尿道が断裂した場合、尿が腹腔内に漏出することがあり腹膜炎を起こします。
症例の状態に応じて、カテーテルなどにより一時的に尿路を確保した後、断裂した尿道を再建します。
尿道の断裂部位や断裂の状態によって尿道が再建できない場合は、尿路変更術を行う場合もあります。

尿路変更術

尿は腎臓で造られ尿管-膀胱-尿道を通って外に排泄されます。膀胱や尿道に腫瘍などの閉塞病変があり、排泄が困難な場合尿路を確保するために尿管や膀胱の一部を他の部位につなげる手術が必要になります。雌では腟など、雄では包皮に尿路を再建することができます。

胃拡張‐胃捻転症候群

急速に多量の食餌を摂食し胃にガスが貯留した状態が胃拡張であり、その拡張した胃が腹腔内で回転してしまうと胃捻転となります。胃捻転が起こってしまうと嘔吐を繰り返したり、お腹が急に膨れ上がったりします。胃捻転が起こってしまった場合は緊急に外科的整復が必要となります。特に大型犬(胸の深い犬種)は注意が必要です。

消化管内異物

異物(おもちゃ、ひも、コイン etc)を摂食した時に起こります。嘔吐や下痢の症状を伴い閉塞状態(異物が進まなくなる)と開腹手術や内視鏡下での摘出術が必要となります。
よく異物を口にする子には注意が必要です。

鼠径ヘルニア・臍ヘルニア

胎児期に母親の胎盤と繋がっている臍帯が閉鎖せずに残り、腹腔内容物が皮下に出てくるのが臍ヘルニア、鼠径部(大腿部の付け根)の鼡径輪(雄では血管、神経、精索、雌では血管、神経、子宮の靱帯が通る)から腹腔内内容物が出てくるのが鼡径ヘルニアです。
ヘルニアとして飛び出している部分が還納する場合(腹腔内に戻ること)症状はありませんが、嵌頓すると(戻らなくなる)腹腔内内容物が壊死したり、腹膜炎を起こしたりするので緊急の手術が必要となります。
このようなリスクがあるので予防的に外科的閉鎖を行うことが理想的です。

子宮蓄膿症

雌の性ホルモンに関連する疾患の一つです。発情休止期に卵巣から分泌されるプロジェステロンにより子宮の活動性が下がり、結果として細菌が定着して子宮蓄膿症を引き起こします。
子宮蓄膿症は全身の様々な臓器に影響を与えますが、気づきやすい症状としては陰部より生理出血とは違うおりものが出る、元気食欲がなくなる、異常に水を飲むなどです。
子宮蓄膿症の治療は基本的に外科手術による卵巣子宮摘出術です。若齢時に適切な避妊手術をしていれば子宮蓄膿症になることはありません。

膀胱結石

尿中に溶解した塩(結晶尿)が尿路内(腎臓、尿管、膀胱、尿道)で凝集して結石を形成します。結石には多くの種類(ストラバイト、シュウ酸カルシウム、尿酸アンモニウム、etc)があり、結石をできる要因(尿路感染、尿のpH、遺伝性、犬種、疾患、etc)も様々です。
膀胱内にある結石を膀胱結石と呼び、膀胱粘膜を刺激し血尿や頻尿症状を引き起こします。治療は内科治療で溶解するものは内科治療で、内科治療で溶解困難なものや再発を繰り返すものは外科的に摘出します。

尿道結石

尿路結石が尿道内にある状態を尿道結石と呼びます。一般的には尿道の長い雄で起こりやすく、尿道を閉塞させてしまい尿の排泄を妨げるので緊急の対応が必要となることもあります。治療は尿道カテーテルで膀胱内に結石を逆行性に戻すことや、尿道を切開すること、繰り返す場合は造瘻術(体外に尿を排出するバイパスを作ること)など状況に応じた対応が必要です。


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