腫瘍科担当獣医師、概要、医療機器、症例のご紹介

腫瘍科

担当獣医師

腫瘍科の紹介

腫瘍では、細胞が何かの原因で異常化し無秩序に増殖していきます。腫瘍細胞の性質によって「良性・悪性」「機能性・非機能性」など様々な分類を行い、診断名が決まります。腫瘍科は、皮膚や内臓・血液など様々な場所に発生する腫瘍疾患に対する検査・治療を行います。まずは、必要な検査を実施して診断を行い、腫瘍の種類により治療法を検討します。腫瘍の種類に応じて、手術による外科療法や抗癌剤による内科療法などを必要に応じて組み合わせることで、それぞれの腫瘍疾患に対する最適な治療を追求します。

よくある症状

  • しこりがある
  • お腹が張っている
  • 痩せた気がする
  • 食欲が減っている
  • 嘔吐がある
  • 血尿が出る

等々、その他どのような症状でも気軽にお尋ねください。

腫瘍科で使用する医療機器の紹介

レントゲン

X線を利用して体内の異常を発見します。腫瘍そのものを発見するほか、肺や骨などへの転移状態も評価することが出来ます。

エコー

超音波を用いてリアルタイムで臓器の状態を把握することが出来ます。怪しい病変があれば細い針で穿刺して細胞を評価することも可能です。

CT

体内の臓器構造を立体的に把握することが出来るため、血管走行や肺の状態など手術計画を立てる上での重要な情報を得ることが出来ます。

内視鏡

胃や腸管にできた病変を視覚的に評価し、生検鉗子を使って採材することで診断に結び付けます。開腹することなく消化管の採材が出来る為、身体への負担が少なくて済みます。

症例紹介

心臓腫瘍

この腫瘍により元気がなくなったり呼吸状態が悪くなったりします。
犬の心臓腫瘍で最も多く認められる血管肉腫は、予後の悪い腫瘍の一つです。腫瘍からの出血が原因で起こる心タンポナーデは状態を著しく悪化させてしまいます。それを予防するための心嚢切除術や、腫瘍切除術、抗癌剤などで治療します。

肺腫瘍

肺腫瘍は肺以外の臓器にある腫瘍が転移してできることが多く、治療に苦慮することが多い病気です。
肺から腫瘍が発生することは稀ですが、肺葉切除術によって完治できる可能性があります。
症状は軽い発咳などわかりにくいことが多く、健康診断によって偶然見つかることもあるため、定期的な検診による早期発見が大切です。

口腔内腫瘍

犬の腫瘍全体の約6%、猫の約10%がこの腫瘍の発生率で、悪性黒色腫(メラノーマ)や扁平上皮癌など悪性のものも多く発生します。口が痛くて食事が困難となり、衰弱してしまいます。
腫瘍の場所や大きさによっては外科的切除が可能ですが、顎の変形を伴うことがあります。また放射線治療により進行を緩徐にできる可能性があります。

鼻腔内腫瘍

なかなか治らない鼻水やくしゃみ、鼻出血が主な症状です。レントゲンやCT検査にて腫瘍の存在が疑わしい場合は、組織を採取して腫瘍の存在を確定させます。放射線治療に反応する腫瘍が多く、外科手術、放射線照射、抗がん剤の組み合わせで治療していきます。

甲状腺腫瘍

甲状腺は喉にある組織で、腫瘍化して大きくなると、発声に変化を認めたり、飲み込みが困難になることがあります。早期に手術で摘出するのが最も有効な治療法ですが、血行が豊富で重要な神経が通っている部分なので丁寧な手術が必要となります。
放射線療法や化学療法も有効で、外科手術とこれらを組み合わせて治療することもあります。

副腎腫瘍

副腎の腫瘍は犬において一般的で、ホルモンを分泌することで体つきの変化や飲水量の変化をもたらします。稀に高血圧を引き起こす褐色細胞腫などが認められることがあります。
副腎は腹部の奥の方にある組織で、周囲には大静脈が走行しているため、慎重な手術が必要です。手術によりホルモンバランスの変化を起こすため、術前術後の管理も大切です。

胃腫瘍

犬では胃の腫瘍の中でも腺癌が70-80%を占めており、猫ではリンパ腫が多く認められます。嘔吐が徐々に増えてきて、食欲が低下することが主に認められる症状です。
ほとんどの胃の腫瘍は外科的摘出手術が適応となります。腫瘍の発生部位や大きさにより広範囲な胃の切除が必要で、難易度は様々です。

腸腫瘍

消化管内腫瘍の中でも発生率が高く、悪性のことが多い腫瘍です。リンパ腫と腺癌は犬と猫どちらでも良く認められますが、猫ではこれらに次いで肥満細胞腫の発生率が高くなっています。
腫瘍の種類によっては手術による広範な腸管切除を必要とすることがありますが、腸管同士を吻合することで食物の通過を可能にします。

肝臓腫瘍

肝臓には他の臓器から腫瘍が転移することも多く、さまざまな細胞の腫瘍が発生します。
沈黙の臓器として知られる肝臓なので、症状が不明瞭なことも多く、健康診断による血液検査、画像診断時に見つかることもあります。
治療の最初の選択肢は外科的切除ですが、腫瘍がどの範囲まで及んでいて、切除可能かどうか事前に超音波検査やCT検査にて精査が必要です。

脾臓腫瘍

犬では脾臓の腫瘤の1/2~2/3が悪性といわれており、もっともよく認められる悪性腫瘍は血管肉腫です。腫瘍からの出血に伴うふらつきや元気消失が主な症状で、急に症状が出ることがあります。
脾臓は摘出してしまっても問題のない臓器なので、手術により摘出が可能です。

直腸腫瘍

腫瘍により血便が出たり、便が出にくくなってしまいます。犬では腺癌や腺腫様ポリープ、猫では腺癌、リンパ腫などが多く認められます。
直腸検査や直腸造影検査、CT検査により腫瘍を確認し、外科的に切除し病理組織検査をすることで診断をします。
骨盤の内部は届きにくい部位ですので、骨盤骨切り術や直腸を引き抜くプルスルー法などの工夫が必要な場合もあります。

肛門周囲の腫瘍

肛門周囲の腫瘍には良性の肛門周囲腺腫、悪性の肛門周囲腺癌や肛門嚢アポクリン腺癌などがあり、肛門の近く発生します。
こすり付けて表面が潰瘍化してしまったり、悪性のものは転移してしまうため、手術により摘出する必要があります。
肛門嚢アポクリン腺癌では高カルシウム血症により水を飲む量が増えることもあります。
肛門周囲腺腫はテストステロンというホルモンの影響を受けるため、去勢手術によりその発生を抑えることができます。

前立腺腫瘍

高齢犬に多い腫瘍でほとんどが悪性です。
前立腺は尿道の周りを囲むように位置するため、症状としては血尿や排尿時の異常を認めます。さらに直腸を圧迫することで排便時の異常を示すこともあります。
尿検査や超音波検査、CT検査を活用して早期に発見することが大切です。尿道の圧迫を解除するために、手術を選択することがあります。

精巣腫瘍

精巣腫瘍はセルトリ細胞腫、ライディッヒ細胞腫、セミノーマなどが代表的で、外科的な切除により治療します。
セルトリ細胞腫の子はエストロジェン過剰症を起こしていることがあり、脱毛や雌性化、骨髄機能の抑制などが認められます。
潜在精巣や鼡径ヘルニアを持つ犬では精巣腫瘍を発生する危険性が高いため、早期の去勢手術が勧められます。

卵巣腫瘍

精巣腫瘍はセルトリ細胞腫、ライディッヒ細胞腫、セミノーマなどが代表的で、外科的な切除により治療します。
セルトリ細胞腫の子はエストロジェン過剰症を起こしていることがあり、脱毛や雌性化、骨髄機能の抑制などが認められます。
潜在精巣や鼡径ヘルニアを持つ犬では精巣腫瘍を発生する危険性が高いため、早期の去勢手術が勧められます。

子宮・腟腫瘍

犬においては平滑筋腫という良性の腫瘍が多いですが、お尻周りが腫れ、排尿や排便が困難になることがあります。
治療は外科的に切除することで行われますが、血行が豊富な部位なので丁寧に行うことが重要です。卵巣由来のホルモンが発生に関与しているので、同時に卵巣摘出手術を行います。

乳腺腫瘍

犬でも猫でもよく認められる腫瘍です。犬の場合は約40%、猫の場合は約85%が悪性と言われており、転移することがあります。乳腺を摘出する手術を行って治療します。
若い時期に不妊手術を受けることで発生を防ぐことが可能な腫瘍なので、早期の不妊手術をお勧めします。

腎臓腫瘍

腎臓の腫瘍は少ないですが、悪性のことが多く、猫ではリンパ腫が最もよく認められます。
症状は血尿などですが、わかりにくいこともあります。
診断は超音波検査、CT検査などを用いて行われます。
腎不全を起こしていたり、エリスロポエチンというホルモンの影響で赤血球の増加を認めることがあります。片側だけの腎腫瘍は、手術により摘出することが可能です。

膀胱腫瘍

膀胱腫瘍は犬の全腫瘍の約1%を占め、多くは移行上皮癌という悪性の腫瘍です。
血尿など、膀胱炎と症状が似ているため、治療への反応が悪い場合は腫瘍を疑って超音波検査、CT検査などをするべきです。発見時には転移していることも多い腫瘍ですので早期発見が重要です。手術による膀胱の切除と化学療法を合わせて行うことで治療します。

骨腫瘍

骨の腫瘍の発生率は低めですが、悪性のものが多く、運動時の痛みを伴います。
犬や猫で最もよく認められる骨腫瘍は骨肉腫です。
診断はレントゲン検査、CT検査、病変部の細胞の形態を確認することで行われます。
断脚術を行うことで痛みを抑制したり、生存期間を伸ばせる可能性があります。

肥満細胞腫

皮膚においてよく認められる腫瘍で、針吸引検査にて顆粒を持った細胞が検出されることが特徴的です。ヒスタミンを放出し、動物の体にさまざまな影響を与えるため、ヒスタミンを抑える薬などが必要です。
手術により切除することが治療の基本ですので、できものに気づいたら早めの受診をお勧めします。

リンパ腫

犬猫ともに最も多く認められる悪性腫瘍です。体の免疫力を司るリンパ球が腫瘍化し、異常に増殖する腫瘍で、様々な臓器で発症する可能性があります。
基本的には化学療法によって治療しますが、確定診断のための生検や発症部位によっては外科的摘出が行われることがあります。猫では白血病ウイルスが発症や予後に関係していますので、ウイルスの感染予防は大切です。


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